本文へスキップ

プラズマエネルギーシステム研究室

豊橋技術科学大学

電気・電子情報工学系

滝川研究室

CAJ法によるカーボンナノホーンの合成










Upload: July 08, 2014
Carbon Nanohon Synthesis by Cavity Arc Jet

このページの写真はクリックすると大きくなるものもあります。

      
 カーボンナノチューブの先端には五員環が6個存在します。6個の五員環が先端に存在することにより,グラフェンシートは一定の半径を保ってストローのようなチューブ状に丸まります。ところが,先端の五員環が一つ欠けると,グラフェンシートは錘状に丸まります。つまり,ホーン(角)状・コーン状の形状となるわけです。このような形状のカーボンナノ粒子はカーボンナノホーン(carbon nanohorn; CNH)と呼ばれます。

 カーボンナノホーンを簡単に作製するキャビティアークジェット法の構成とキャビティアークジェットの様子を次に示します。大気中において,二つの黒鉛板の間に切込みを入れたテフロン製絶縁板を入れます。切れ込み部は,細隙(キャビティ)を形成します。二つの黒鉛を電極とし,直流電圧を印加すると,キャビティにアーク放電が発生します。アーク放電によって陽極黒鉛が激しく蒸発します。高温蒸発物の体積はキャビティの体積以上であるため,切り口からプラズマジェットが放出されます。キャビティからプラズマジェットが放出している実際の様子が右の写真です。プラズマジェットの成分は炭素ですので,ジェットをキャビティ前方に配置した金属板(すす回収板)に当てると,その表面に炭素すすが堆積します。このすす中にカーボンナノホーンが含まれます。
    

 すす回収板に堆積したすすを透過型電子顕微鏡(TEM)で分析した結果を下に示します。すすのほとんどは左写真のように 30〜150 nmの粒子です。この粒子の表面には,中央写真のように単層のグラフェンシートで構成された角状の物質が存在します。この角状物質がカーボンナノホーンです。ナノホーンは個々に単独で存在することはなく,右図のように集合体粒子として得られます。つまり,ナノホーンを一次粒子とすれば,ナノホーン粒子(CNH粒子)は二次粒子とみなせます。ナノホーン粒子内部の構造は複雑でよく分かりません。回収されたすすのうち,約30%がナノホーン粒子です。
 なお,陽極黒鉛にイットリウム(Y)を混ぜておくと,陽極の蒸発速度が増加し,すすの生成量,つまりナノホーン粒子の合成量を増やすことができます。



回収すすの低倍率TEM写真 カーボンナノホーンのTEM写真 カーボンナノホーン粒子


 キャビティが,アーク電流に対し十分に小さな空間でないと,陽極表面が高速に蒸発せず,十分に発達したジェットが発生しません。キャビティアークジェットがうまく発生しないとカーボンナノホーンが合成できません。参考のため,キャビティアークジェットがうまく発生できた場合(成功)と,うまく発生できなかった場合(失敗)について,そのジェットのビデオと放電後の陽極表面の様相を示します。成功時には,陽極表面が均一に蒸発している様子がわかります。一方,失敗した場合には,線状あるいは点状に陽極スポットが移動した痕跡が観察できます。

成功時 失敗時
ジェットの様相 Movie
Movie
放電後の陽極表面

BACK