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プラズマエネルギーシステム研究室

豊橋技術科学大学

電気・電子情報工学系

滝川研究室

シールド法の有効性










Uploaded July 03, 2014
Various Films prepared by Shielded Cathodic Vacuum Arc Deposition

 ノーマル法(シールド板を使わない場合)およびシールド法で作製した各種薄膜(金属窒化物・酸化物)の光学顕微鏡写真を下図に示します。種々の金属を陰極とし,窒素あるいは酸素雰囲気中で作製したものです。生成膜は,ドロップレットの有無の観点から,次の3種類に分類できます。

  (1) ノーマル法でも,ドロップレットの付着がほとんど無い膜(黒枠)
  (2) シールド法で,十分ドロップレットの付着が抑制できる膜(二重赤枠)
  (3) シールド法では,ドロップレットの付着防止があまり期待できない膜(点線青枠)

 実は,酸化チタン(TiO2),酸化・窒化クロム(Cr oxide,CrN),酸化亜鉛(ZnO) などを作製する場合,ドロップレット自体があまり発生しません。このことは,ドロップレットの発生は,陰極材料や雰囲気ガス種の影響を受ける,ということを意味しています。また,これらの膜の場合,多少のドロップレットが付着してとしても,膜機能に対しては問題にならない程度です。
 一方,シールド法が極めて有効なのは,酸化・窒化アルミ(Al2O3,AlN),窒化チタン(TiN),酸化銅(CuO),および窒化亜鉛(ZnN)膜の場合です。これらの場合,シールドを用いることで,ドロップレットの付着量を激減できます。これは,発生するドロップレットが溶融した液体状であるため,ドロプレットは最初に衝突する壁あるいはシールド板に付着し,そこで停止するからであると考えられます。
 しかし,シールド法が有効でないものもあります。下の図では,窒化銅(Cu3N)がその例です。その他,黒鉛を陰極としたダイヤモンドライクカーボン(Diamond-Like Carbon; DLC)膜合成の場合も,シールド法はあまり有効ではありません。その理由としては,発生するドロップレットが固体であるため,装置内壁で反射を繰り返し,基板まで到達してしまうからであると考えられます。