Uploaded July 03, 2014 Nanotube Preparation on SiC Particle Surface by Vacuum Sublimation |
SiC(炭化ケイ素)を真空中でレーザ加熱すると,SiCの表面に多層カーボンナノチューブ(MWCNT or MWNT: Multi-Walled Carbon NanoTube)が形成されることを,日本ファインセラミックセンター(JFCC)の楠美智子 博士が発見しました。そこで,本研究室ではSiCを真空中で単に加熱するだけでもその表面にナノチューブが形成できないかと考え,実験を行ってみました。すなわち,真空昇華法によるSiC微粒子表面のナノチューブ化を狙ったものです。 |
真空チャンバの中にタングステンあるいはカーボンの加熱ボートを配置し,SiC微粒子を載せ,加熱する装置です。 |
SiC(多結晶)微粒子(300メッシュ,短径:約 50 μm)を,条件<圧力:約0.01
Pa,加熱温度:1,650℃,加熱時間:15 min>でプロセスしたものです。
SiC微粒子の全体像写真です。粒子の下の方がもやもやしている様子がわかります。破線の内側にナノチューブが形成されています。 | 左の写真の□部拡大写真です。ナノチューブは必ずしも真っ直ぐではありません。微粒子表面の段差があるようなところは早く成長します。また,ツブツブは,成長し始めたナノチューブの頭です。 |
SiCの表面昇華によるカーボンナノチューブの合成メカニズムは,雰囲気の残留酸素がSiC表面のSiを取り去り,表面に残ったCがナノチューブ形状に再配列するものだと考えられています。詳しくは,日本ファインセラミックセンター(JFCC)の楠美智子
研究員にお尋ねください。
SiO2ナノファイバの応用を検討されたい方,是非ご連絡ください。
Uploaded 2 Oct SiO2 Nanofiber Synthesis from SiC particle by Vacuum Sublimation |
SiCの表面昇華によるカーボンナノチューブの合成において,酸素が関与しているとすれば,より多くの酸素を供給してみたらどうかと考え,真空チャンバに酸素を流しつつ同じような実験を行ってみました。その結果,ファイバ状の物質が大量に合成されることがわかりました。しかしながら,それはカーボンナノチューブではなく,アモルファスのSiO2ナノファイバでした。 |
SiC(多結晶)微粒子(300メッシュ,短径:約 50 μm)を,条件<圧力:約0.1
Pa,酸素ガス流量:0.1 ml/min,加熱温度:1,500℃,加熱時間:10 min> でプロセスしたものです。
SiC微粒子の表面一面に合成されたSiO2ナノファイバの様子です。カーボンナノチューブの場合とは様相が全く異なります。 | 左の物質の透過型電子顕微鏡(TEM)写真です。ファイバは透けていてアモルファス(非晶質)であることがわかります。 |
Co微粒子を混ぜてプロセスしたときのSiC微粒子の表面の様子です。Co微粒子を混ぜるとより大量のSiO2ナノファイバが合成されました。 | 左の写真の拡大です。ファイバの先端が少し膨らんでいる様子がわかります。 | TEMで観察すると,ファイバの先端にCo粒子が存在することがわかります。 |
SiC微粒子表面におけるカーボンナノチューブとSiO2アモルファスナノファイバの形成モデル
カーボンナノチューブの成長 | ||
(1) 容器内の残留酸素がふらふらとSiC表面にやってくる。 (2) 酸素が表面のSi(ケイ素,シリコン)と反応し,表面から脱離する。 (3) Siが抜けた後,表面に残ったC(炭素)がナノチューブ構造に変化する。 ※ この方法の場合,元のSiC表面の位置とナノチューブの先端の位置とが一致します。すなわち,表面から外向きにナノチューブが成長するのではなく,表面から内向きにナノチューブが成長します。従って,酸素がたどり着けない深さまで表面がナノチューブで覆われると,ナノチューブの成長が止まります。また,残念ながら今のところ,全表面がナノチューブで覆われている微粒子は得られていません。 |
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SiO2ナノファイバの成長 | ||
(1) 大量の酸素がSiC表面にやってくる。 (2) Siだけでなく,Cも酸素と反応して,SiC表面から脱離する。 (3) COxの方が軽いため,すぐに排気される。 (4) 重たいSiOxが十分な酸素の供給によって,SiO2として凝縮する。 (5) Co微粒子が近くにいると,Coの触媒作用により,SiO2ナノファイバの成長が促進される。 |