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プラズマエネルギーシステム研究室

豊橋技術科学大学

電気・電子情報工学系

滝川研究室

大気中トーチアーク法によるカーボンナノチューブの合成










Updated: July 03, 2014
Carbon Nanotube Synthesis by Torch Arc Method
      
 従来のアーク放電法は,不活性ガスの低圧中でナノチューブの合成プロセスが行われます。従って合成装置には真空チャンバや真空排気装置などが必要です。真空容器内でのプロセスは,合成装置の設計自由度が制限され,大量合成装置を構築するのが困難になります。
 大気中トーチアーク法は,真空チャンバや真空装置を必要としない手法です。また,基本装置も,溶接用のTIG(Tungsten-electrode-Inert-Gas)アークトーチを用いる単純な構成です。


多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の合成
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)・カーボンナノホーン(CNH)の合成

●従来法との相違点(多層カーボンナノチューブ,Multi-Walled Carbon Nanotube; MWCNT)
 従来の低圧アーク法は,陽極を蒸発させて,陰極表面にMWCNTを堆積させる方法です。従って,従来法は陽極蒸発法と呼べる方法です。一方,トーチアーク法は,基板表面をグラファイト(黒鉛)からMWCNTに変形させる方法です。蒸発を利用しているわけではありません。トーチアーク法は,表層変質法とも言えます。

●従来法との相違点(単層カーボンナノチューブ,Single Walled Carbon Nanotube; SWCNT)
 従来の低圧アーク法によるSWCNTの合成法は,MWCNTの合成と同様に,陽極蒸発法です。ただし,陽極には金属触媒を含んだ黒鉛を用います。更に,SWCNTのように陰極表面に堆積するのではなく,一般に,陰極側面やチャンバ壁面に堆積したすす中に存在します。SWCNTは,陽極から蒸発した炭素が金属微粒子を触媒として成長します。開放大気中でプロセスを行うトーチアーク法でも,SWCNTの合成にはこの理屈(炭素蒸気が金属微粒子を触媒として成長する)を応用しています。
 ただし,陽極の蒸発メカニズムは従来法とはやや異なります。従来法の場合は,プラズマ中の電子が陽極に衝突して陽極が蒸発します。しかし,トーチアーク法の場合,グラファイトに混入させた低融点の金属が爆発的に蒸発する現象を利用しています。(ただし,従来法でもこの現象が作用している可能性もあります。)

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