Updated july 03, 2014 Shielded Cathodic Vacuum Arc Deposition |
大分類 | ドロップレットの発生自体を抑制する | ドロップレットの除去(フィルタリング)した 空間で成膜を行う |
主な手法 | ・ステアド法 ・分散放電法 ・ガス冷却法 ・パルス放電法 ・陽極法 |
・シールド法 ・磁気フィルタ法(磁気輸送法) ・同軸型放電法 |
このうち,ステアド法は一般的に利用され,これに加えて他の手法を併用します。
ここでは,シールド法について紹介します。シールド手法のベースは,名古屋大学
教授 高井治先生らの開発によるものです。次の図にシールド型真空アーク蒸着装置の模式図を示します。
この装置は,陰極(Cathode)と基板(Substrate)との間に,一枚のじゃま板(シールド板:Shield
plate)を配置した単純なものです。次の図に示すように,陰極点(Cathode spot)から発生するドロップレット(Droplet)は直進するため,このじゃま板によってさえぎられ,基板には到達しません。同様に中性粒子(Neutrals)もこのじゃま板でさえぎられます。しかしながら,プラズマ(Plasma)中の電子はプラズマ内を比較的自由に動きます。従って,電子はじゃま板の背後に回り込みます。そして,イオンは電子に引きずられるようにして(双極性拡散による),じゃま板の背後に回りこみます。その結果,じゃま板の背後に配置した基板上にイオンが到達し,膜が形成されます。じゃま板の直後は電子の回り込みが少なく,プラズマが薄いので,じゃま板の直後に基板を配置すると,膜があまり堆積しません。
次に,シールドしない場合(通常のステアド法の場合,ノンシールド法)と,シールド法によって成膜した場合との比較を示します。ノンシールド(Non-shield)の場合には,大量のドロップレットが付着している様子がわかります。窒化アルミニウム(AlN)は透明膜ですが,この膜はドレップレットが大量に付着しているのでの透明ではありません。一方,shield法で作成した場合には,ドレップレットはほとんど付着していません。ドロップレットが付着していない膜は透明です。
このように,シールド法は,とても簡単な細工により,ドロップレットがほとんどない膜を作ることができます。しかしながら,じゃま板は,陰極点から放出されるドロップレットや中性粒子と同時に,成膜に寄与するイオンの大部分までもトラップしてしまいます。その結果,じゃま板がない場合(ノンシールド法)の場合と比較して,成膜速度が
1/3 あるいはそれ以下に低下してしまうという問題が生じます。
従って,シールド法において成膜速度を改善する技術の開発が必要になります。